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梅雨の日

(2009-03-08)
  七月のある夜。
  空気中に水分を含んだ匂いを感じて、
  ベランダに出てみると薄く煙った空から音もなく雨が降っていた。

  
  トタン屋根の向こうへ手を伸ばし、雨を受けながら
  明日は晴れるだろうか、と考えている。
  その一方で雨であってほしいという気持ちが存在していた。
 

  都立の高校へ通っている僕は、クラスメイトの花野に心惹かれていた。
  けれど同じ教室にいながら一度も言葉を交わしたことはなく、
  ただ遠くから見ていた。

  声すらかけられない自分だったが、彼女を目で追ううちに
  色んなことを知った。
  本が好きということ。
  中庭がお気に入りだということ。
  歌が好きだということ。
  それから雨の日は誰よりも早く教室にいること。

    はじめは偶然が重なっただけと思った。
   でも雨の日になると彼女は決まって一番に学校へ来ていた。
   だからといって会話があるわけじゃない。
   ただ教室に二人でいるということが嬉しかった。
   その日から僕は雨の訪れを心待ちにするようになっていた。 
 
   休日明けの月曜日。
   一昨日から降り続いた雨は朝には上がっていた。
    といってもまだ天候ははっきりしない。
   見あげた空は白く曇っている。
  
   今日彼女はきているだろうか。
   教室の窓ぎわで本を読む彼女の姿を思うと、足どりが一層軽くなった。
   一呼吸おいて教室のドアを開ける。と同時に湿気をおびた風を感じた。
  窓が開け放たれカーテンが静かにゆれている。
  花野の姿はない。
  
  窓の側までいくと床の染みが目にとまった。
  休み前に誰かが閉め忘れたのだろう。
  窓を閉めると雑巾を取りに廊下へ出た。
  ところが鉄製の棒にかけられた布はすべて濡れてしまっていた。
 
  為す術を失った僕は皆が登校するまでの間を、窓辺で過ごした。
  彼女の席は太陽の光がよく当たる前から3番目の窓ぎわの席。
  その場所から見える空は澄んでいて、花野がこの風景をいつも眺めていると思うと
  羨ましく思えた。
  その日、彼女は姿を見せなかった。



 


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Author:柊
11月7日生まれ

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